高校卒業後、産業用装置メーカーに就職して、エンジニアとして半導体製造装置の組み立て業務に携わりました。当時は明確な将来像はなく生活のために選んだ仕事でしたが、エンジニア職を志望したのは職人への憧れがあったから。テレビや漫画で目にしたプロフェッショナルの姿に、「1つの道を極めるってかっこいいな」と思っていました。
モノづくりやテクノロジーの面白さに目覚めたのは、実際に働いてからです。肉眼で見えないほど小さな半導体には先端の技術が集約されていて、それが生活のあらゆるところに使われてインフラを支えていると知った時、「自分はすごい世界にいるんだ」とワクワクしました。
その後、半導体だけでなくもっといろいろな技術に触れてみたいと、幅広い職種を経験できるビーネックステクノロジーズに入社。気が付けば10年が経ちますが、結局は半導体が面白すぎて、同じ業界でキャリアを重ねています。
入社以来、大手半導体製造装置メーカーで半導体洗浄装置の製造に携わっています。スマホやパソコンに使われる半導体チップは、髪の毛の1万分の1という細さの電子回路で構成される精密な電子部品。ホコリ1つでも付着しようものなら大きく性能が損なわれてしまうので、微細な汚れを除去する洗浄装置は半導体産業に欠かせない存在です。
1年目は装置の組み立て、2年目からは作業リーダーとして、工程管理や新人教育を任されるようになりました。担当する工程が増えるにつれてチームも大きくなり、4年目には50人のチームのリーダーに。5年目以降は工場全体の品質管理に携わるようになり、10年目の現在は生産技術エンジニアとして、製造をスムーズに進めるための業務を行っています。
具体的な業務は、不良品の原因究明や設備の修理、部品管理など多岐にわたります。いわば“何でも屋”ですが、その中でも力を入れているのが改善業務。生産ラインや製造プロセスの課題を見つけて解決し、生産効率や品質の向上、コスト削減につなげています。これまで、業務効率化を目的としたチャットボットアプリの開発・導入や、工具管理に使う緩衝材をレゴブロックに変更し、異物混入防止とコスト削減を図る改善などを行ってきました。
そもそも改善業務に取り組むようになったのは、自分が不器用で苦労したからなんです。それこそ、1年目は失敗ばかりで、周りに迷惑をかけることもしょっちゅう。仕事をもっと正確に、スムーズに対応できるようになりたいという思いから、ミスの原因を探して対策を考え、実践してはまた改善するという、ミスを防ぐ工夫が習慣になっていきました。
そしてある時、配管作業中にどうしても管を傷つけてしまうので、管を保護できる治具(作業を補助する器具)を作って対策したところ、工場全体に採用されたのです。自分の工夫がみんなの役にも立ったことは、大きな励みになりました。これを機に改善を提案・採用される機会が増えていき、提案するからには品質管理をしっかり学びたいと、QC検定2級・3級も取得。今はAIも活用しながら改善に取り組み、社内に広げています。
不器用な自分だからこそ、改善の種を見つけられる。そう気付いたら、コンプレックスを最強の強みとして活かせるエンジニアの仕事が、楽しくてたまらなくなりました。
リーダーになり、作業者からの意見を受け止める立場になって、初めて気が付いたことがあります。それは、自分が新人だった頃、先輩はグッとこらえてどんな意見も受けとめてくれていたのだということ。感謝の気持ちで胸がいっぱいになるのと同時に、自分のことだけでなく、みんなのことを考えるのがリーダーの役割なんだと、強く自覚しました。
そこからはリーダーとしてイチから学ぼうと、リーダー論や組織論の本を読み、尊敬するリーダーの真似をしながら少しずつ成長。今は「自分がどれだけ評価されるか」ではなく、「どれだけ価値を与えられるか」を軸に行動できるようになりました。
たくさんつまずきながらもここまで頑張れたのは、憧れの存在にたくさん出会えたから。どうすればもっと良い装置になるか本気で考え、それを心から楽しんでいる先輩。どんな時もチームを第一に考えて行動する先輩。大きな責任を負いながらもいつも大らかで、周りを安心させてくれる先輩。その姿はもう本当に輝いていて。「あんなエンジニアに自分もなりたい」「成果を出して先輩に喜んでもらいたい」と思い続けたことが、成長の原動力になりました。
すごい人というのは成長を止めないので、先輩との距離は一向に縮まらないです。でも、追いかける人がいるのは最高に幸せなこと。これからは追いかけるだけでなく、自分も挑戦する背中を後輩に見せて、「あの人、不器用だけど尊敬できるな」と思ってもらえるようなエンジニアを目指したいです。